ドクター関口のちょっとセクシーな女子会ブログ

女性医療クリニックLUNAグループ理事長のプログです。健康ネタ、マンガネタバレ、旅行ネタ、歌舞伎ネタが豊富です。

ドクター関口のちょっとセクシーな女子会ブログ~坂田藤十郎と扇千景~

4代目坂田藤十郎が、88歳でなくなりました。
80歳すぎても美しい女方でした。
中村扇雀⇒中村鴈次郎⇒坂田藤十郎と襲名していますが、
中村扇雀の時は、もてて、もてて、困ったそうです。
それ以後も、流した浮名は、数知れずのようです。

曽根崎心中のお初は有名でDVDも出ています。
この曽根崎心中は、元禄時代近松門左衛門を有名にした演目です。
学校で習いましたよね。

しかしその後長く上演されず
昭和になってから250年ぶりに復活上演されました。
このお初、めちゃくちゃ積極的な女性です。

お初は遊女なんですが、醤油問屋で働く徳兵衛という恋人がいます。
徳兵衛は、とてもまじめないい人なんですが、お初を身請けするほどの経済力はなし。
それでも二人は幸せだったのですが、
徳兵衛は、友達に騙されて無実の罪を着せられてしまいます。

江戸時代ですから
このままでは死罪になってしまうと徳兵衛は悩むんですが、
お初は、どうせ死罪になるならいっしょに死のうと提案します。

結局お初が主導権をもって
徳兵衛はずるずる引きずられて二人は心中してしまいます。

DVDでは坂田藤十郎のお初と現中村鴈次郎(息子)の徳兵衛が
雪の中で心中するんですが、この世のものとは思えない美しさです。

劇中では、終始迷いのないお初の態度がとても男らしいんですよ。
あまりに男らしい女のドラマなので、
元禄時代の後、昭和になるまで日本社会に受け入れられなかったのかもしれません。
お初が、縁の下に隠れている徳兵衛に、足を垂らして合図する場面があるんですが、
たぶん70代だと推定される坂田藤十郎の垂らした足が、異様に美しいんです。

このいくつになっても足先まで美しく保つというこだわりは、見習いたいですよね。
またこれもDVDですが、藤娘も素晴らしいです。
本当に”娘”が、無心に楽しそうに踊っています。

もう一つ話題にしたいのが、妻の扇千景のこと。
彼女は、
お姫さま女優だったんですが、
坂田藤十郎と結婚して女優引退。

梨園の嫁として義父母に仕え、
男子2人(現:中村鴈次郎&中村扇雀)を産んで、りっぱに関西歌舞伎の血脈も維持して、
その後自民党の全国から出馬して長く参議院議員をして
参議院議長とか、
国土交通大臣とか
建設大臣とか
運輸大臣とかもしています。

こう聞くと扇千景も立派だが、
坂田藤十郎も、
自分が有名な歌舞伎役者でありながら
妻のキャリア形成を妨げないなんて
なんてすばらしい男性なんだろうと思う方も多いと思います。

しかし扇千景が、
藤十郎の逝去の際に述べた
”芸のために生まれ、役者として最後まで芸に生きた人でした。”
という一言からもわかるように、
芸以外には、
興味がない人だったようです。
家事や育児や、義父母の介護や、
御贔屓様とのお付き合いをしっかりしてくれれば、
後は何をしてもよかったわけですね。

この辺りは、
日本経済新聞社刊の私の履歴書に詳しくかかれています。
この本、夫婦別々に、
自分達の人生を語っていますが、
もてた思い出や上方歌舞伎の大名跡
坂田藤十郎襲名の顛末を語る
藤十郎の部分より千景の部分のほうが、迫力があります。

千景は、
とても忙しい日々を送りながら、時々燃えつきます。
デパートの食堂で二人の子供に
食事をさせながら、燃え尽きたり、
子供が独立したあと
夫婦二人きりの朝ごはんを食べながら
燃え尽きたりするんです。
しかししばらくすると復活!!
扇千景は、テレビで見ると
はっきりものを言いそうなタイブに見えるので、
敵も多かっただろうと推察しますが、
80代女性の一生としては凄いと思います。
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坂田藤十郎
扇千景
曽根崎心中