関口由紀のブログ

女性医療クリニックLUNAグループ理事長のプログです。健康ネタ、マンガネタバレ、旅行ネタ、歌舞伎ネタが豊富です。

尿失禁手術後の排尿困難と尿失禁手術の歴史(3)(改訂版)

(TVT手術の後でも、排尿困難になる患者がいる)

しかしこの画期的な手術の後でも、排尿困難になる患者はいます。
第1の原因と考えられるのは、膀胱収縮力の低さです。
尿失禁手術の術前には、何回か残尿
(排尿直後に膀胱内に残っている尿の量)
を測定します。
通常尿もれの患者さんは、尿道抵抗が低いため、
残尿は0mlのことがほとんどです。一
般的には残尿は100mlくらいまでは、
正常範囲と考えられ、排尿困難の自覚症状がなければ、
無治療でいいのですが、
尿失禁の手術前の場合は、残尿10ml程度でも、
術後の排尿困難のリスクがあります。
なぜなら尿失禁があるということは
尿道抵抗が低い状態であることが多いのに、
残尿があるということは、
膀胱の収縮力が低下している可能性があるからです。

第2の原因としては、尿道の機能の悪さです。
前述のように骨盤底筋群が脆弱な場合は、
骨盤底筋の強化と恥骨尿道靭帯の補強で尿失禁が改善します。
しかし重症な腹圧性尿失禁の中には、
尿道自体の機能が悪い場合があります。
この場合テープをすこしきつくして、
尿道を引き上げて尿道抵抗を高めないと
尿失禁が改善しない場合があるんです。
 ですから重症な尿失禁ほど、
充分に尿道抵抗をたかめられない場合は、
手術をしても尿失禁がコントロールできなかったり、
かえって尿道抵抗を上げすぎて、
失禁の症状が改善したかわりに
排尿困難の症状がでたりしてしまいます。
つまり重症な尿失禁には、
術者のさじ加減が必要ということです。
尿失禁の手術後に排尿困難を認める場合は、
しばらくは投薬や自己導尿(写真のような道具を使用)で
経過をみます。
尿失禁の患者の尿道抵抗は通常低いので、
膀胱の排尿筋を使用しなくて排尿している人がいます。
このような人は、潜在的な排尿筋収縮力はあるのですが、
収縮させる必要がないので、
収縮させていなかったのです。
このような人は、手術直後は、排尿困難がありますが、
自排尿+導尿でしばらく様子をみていると、
自分で排尿できるようになります。
骨盤底筋群は、尿失禁予防にも関与していますが、
排尿にも関与していますので、
骨盤底筋トレーニングも同時に行います。
数ヶ月経過をみても自己導尿を中止できない場合は、
移植したテープを切断することもあります。
ところで移植したテープを切断しても、
尿失禁は起きないことがほとんどです。
なぜならテープを切断することで、尿道抵抗は下がりますが、
恥骨尿道靭帯の再生という目的は達成されているからです。
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