ドクター関口のちょっとセクシーな女子会ブログ

女性医療クリニックLUNAグループ理事長のプログです。健康ネタ、マンガネタバレ、旅行ネタ、歌舞伎ネタが豊富です。

TVT手術の欠点を克服した尿失禁手術がTFSです。

素晴らしい歴史的な発明である尿失禁手術TVTですが、
欠点もあります。
膣から移植したテープを腹壁まで貫通させるために、
恥骨の裏の大きな血管を刺してしまい後腹膜血腫がおこったり、
腹腔内と後腹膜の境界である腹膜を刺してしまい
腸閉塞が起こってしまう合併症が起こることがあるのです。
それらの合併症を回避するために開発されたのが、
当院で行なっている日帰り尿失禁手術TFSです。
このTFSですが、TVTの開発者の一人である
ペトロス先生のオリジナル手術です。
TFS手術は、TVT手術同様に膣から7mmのテープを、
中部尿道に移植するのですが、
その先端は、膣壁から2cmくらい頭側にある尿生殖隔膜に、
ポリプロピレン製のホックで引っ掛けるんです。
この改良により前述の後腹膜血腫や腸閉塞等の合併症は、
ほとんどゼロにすることができるようになったのです。
この改良により日帰り尿失禁手術が可能になりました。
ところで現在日本でよく行われいるもう一つの手術に
TOT手術があります。
この手術も、テンションフリー理論(尿失禁手術の歴史の回参照)
の流れから開発された手術です。
膣から入れた中部尿道を支えるテープの断端を、
尿道の左右にある骨盤を構成する骨の一つである座骨にある孔、
閉鎖孔に通します。
この手術でも、後腹膜血腫や腸閉塞の合併症が避けられるんです。
ですからTOT手術も、日帰りで行えます。
ではTFSとTOTの違いが何か?
実はテープの向きが違うんです。
TFSは、U字型にテープを置きますが、
TOTは、T字型にテープを置きます。
この違いによりTFSとTVT手術のほうが、
TOT手術より尿道抵抗をわずかに上げるのです。
TOTは、インテグラル理論(尿失禁手術の歴史の回参照)
にもとずく骨盤底筋や恥骨尿道靭帯の脆弱化による
尿失禁には、TVTやTFSと同様効果的ですが、
尿道自体の機能が悪い重症の尿失禁に対する効果は、
TFSやTVTに劣るのです。
ですからTOTの手術後に尿失禁が改善せず、
再度TFS手術やTVT手術を行うこともあります。
つまりテンションフリー理論にもとずいた
尿失禁手術のうち効果が高く合併症が少ない日帰り可能な手術が
TFSによる尿失禁手術ということになるのです。
(フーやっとここまでたどりつきました。ー笑ー)f:id:sekiguchiyuki:20180626100121j:plain